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第82回 「ナルメル王のメイスヘッド その5」 [ナルメル王のメイスヘッド]

大城道則著 『ピラミッド以前の古代エジプト文明』 創元社2009年 によれば、

ナルメル王のメイスヘッドに描かれている3頭の囲いの中の動物は、

「牛」ということになっています。

私は、これを「ガゼル」としました。


また、その上の鳥は、大城氏によれば

デルタ地帯の主要都市であったブトを象徴する鳥


となっていますが、私は「ジェフウティ(トト)」としました。



鳥がブトの鳥であるか、ジェフウトの鳥なのかは、

実は非常に大きな違いがあります。



これがもしブトであれば、

このメイスヘッドの場面に、


「下エジプトの町が出てきた」

ことになります。


王は下エジプトの象徴であると言われる赤冠を被っていますから、

ナルメル王が下エジプトの王としてブトに家畜を贈ったことになります。




しかし、ブトは上エジプトからすると、かなり遠い場所です。

いきなり唐突な感じがします。




ブトの鳥は、特定は難しいものの、有力視されているのは「バー」を表す鳥です。

一説ではクラハシコウとされていますが、

G29A.gif

です。



いっぽう、ジェフウティはトキで

G26A.gif

です。



くちばしの形などを見れば、ブトの鳥かとも思ってしまうかもしれません。

しかし、ブトはウアジェト女神で知られた町ですし、

ナルメル王のすぐ後のアハ王のラベルですでに

ウアジェト女神とネクベト女神が並んだ、

いわゆる「二女神名」が出てきますから、

ブトの神殿に家畜を贈ろうという場合、

第一に標章とされるべきは「蛇」です。

ブトの町の標章としては、考えにくい。



いっぽう、リビア・パレットでネケン(ネケブ)の隣に登場したジェフウトは、

トキの姿をしたジェフウティ、後のトト神の町ですから、

このメジャーな神の神殿が別格に扱われたとしても不思議ではありません。

ネクベト女神の守護するネケン・ネケブの双子の町と、

ジェフウト(ヘルモポリス・マグナ)は、

共に上エジプトの有力ノモスですから、

ネケンサイドからジェフウトに進物を贈ったということは、

自然に受け止められます。




もうひとつ。

ノモスの標章は4つ見えています。

犬ような動物の姿をしたウプウアウトを標章とするノモス。

これは、後の上エジプト第17ノモスの標章です。


後にギリシア語でキノポリス(犬の町)と呼ばれた町ではないかと推測します。

そこは、「ハヤブサの町」、

ヒエラコンポリス(ネケン)に近い町です。

おそらくは、ネケンの盟友でしょう。



他に3つのノモスがありますが、

ジェフウトがありません。

上エジプトで、ネケンの町が忘れてはならない有力ノモス、

ジェフウトがないわけです。



ジェフウトが見えずに、ブトが見える、

このことに私は違和感を感じるので、

ナルメル王のメイスヘッドでガゼルを贈った神殿はトト神殿(ジェフウティ神殿)、

町はジェフウト(ヘルモポリス・マグナ)と解釈しました。



するとですね、だいぶ難しいことになってくるわけですよ。

なぜならば、ナルメル王のパレットと並んで、

このメイスヘッドは、

ナルメル王による上下エジプト統一の証拠、

と考える人が多いからです。



上下エジプトの統一の場面に、

ブトが登場しているのは、都合がいいわけなのです。

ブトは、ナイルデルタにあり、下エジプトの町なので。

王は下エジプト王の赤冠を被っていますしね。



その説明が、怪しくなってしまうんですね、

ブトでなく、ジェフウトだとしますと。


そうなってくるとですね、

アハ王のラベルに登場する、

ネイト女神の守護する町、

下エジプトの「サイス」が問題となってくるわけなんです。










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第81回 「ナルメル王のメイスヘッド その5」 [ナルメル王のメイスヘッド]

牛40万頭、ヤギ100万頭に加えて42万頭、捕虜12万人。

これは、頭数検査です。

古代エジプトでは、家畜の頭数調査がありました。

行われるのは2年に一度。

非常に重要な行事で、王の治世の出来事を示すときには、

「何回目の頭数調査の年」

という表現をしていました。

西暦がないって、不便だったんですね。



で、興味深いのは、

「セド祭と頭数調査が同じ年にあった」

ということなんですね。

たぶん、メイスヘッドはセド祭のほうで使われたでしょう。



ということは、このセド祭、即位後の偶数年にやったんですね。


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第80回 「ナルメル王のメイスヘッド その4」 [ナルメル王のメイスヘッド]

セド祭における走行儀礼は、

永らく王の健在を示すものと考えられてきました。



しかし、皆さんにお考えいただきたいことがあります。

今年、90歳を迎える王がセド祭を挙行し、走行儀礼を披露することになりました。

もし、王が無事、よろよろと歩きながら走る真似ごとをしたとして、

あなたは「健在」と感じるでしょうか?




それでも走り終えれば、なんとか納得できるでしょう。

しかし、走りきることができなければ、みなさんはどう思われますか?



エジプト王は終身ですから、

もしセド祭が王の健在を証明するものならば、

王が走行儀礼を失敗した途端、

ピラミッドの玄室に直行させるか、カバに襲われて亡くなったことにしなくてはならないかもしれません。




そもそもエジプト王が、いくら古の時代からの習わしとはいえ、

そこまでのリスクを背負ったとは思えません。





では、走行儀礼とは何だったのか。


その鍵は、「半月状の石」です。




この石、サッカラの階段ピラミッドのセド祭の庭にあります。


ある専門家によれば、「B」の形とも言われますが、

それは2つを縦に並べて見たたからであって、基本は1つずつです。




この半月状の石の、最も初期の形が、このメイスヘッドです。

なんとなくミカンの房のような形をしています。

これ、意味があるのです。


これ、「半分になった口」のヒエログリフなのです。


意味は、「境」「国境」です。


王は、健在を示すのではなく、領土支配の確認を各ノモス代表の前で行っていたのです。





エジプト王の他の走行儀礼は、メンフィスの町壁の周囲を走ったというものです。

エジプト王は、走行儀礼によって支配地を確定する習慣があったのです。

となると、メイスヘッドの半月状の口型の間の人びとは、支配地内の人間、ということになります。




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第79回 「ナルメル王のメイスヘッド その3」 [ナルメル王のメイスヘッド]

先に示したメイスヘッドの図。

中ほどの王座は、王宮内部ではなく、

屋外に設置されたものです。

つまり、通常の政務ではなく、

「見せるための祭儀」

が挙行されたと見るべきでしょう。

おそらく、王座のある建物は「セド祭」のための建物です。


セド祭とは、王位更新祭とも訳され、王が自らの王位を継続するために行った祭儀と言われています。

祭儀のメインは「走行儀礼」と呼ばれ、王がセド祭の庭にある半月状の石の周囲を走ります。


一説によれば、先王朝時代の王は30年の期限が来ると殺されねばならなかった決まりがあり、セド祭はその名残だと言います。


しかし、私はその考えを鵜呑みにはできません。
まず、即位後30年という期間には疑問があります。まず、Aという王がいたとします。Aは即位29年で没したとします。

次に、Bという王が即位しました。Bもまた、即位29年で没した場合、セド祭の開催はCが開催する即位30年の時です。


じつにA王から数えて88年後になります。

その間に、祭儀を継承する者はいなくなり、祭儀の意味は薄れます。



こうした考え方が、素人の一般常識というものです。


専門家だから陥る落とし穴がある、くらいに思っているのがちょうどよい、

私はそう思っています。


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第78回 「ナルメル王のメイスヘッド その2」 [ナルメル王のメイスヘッド]

narmrmhd.jpg

上の図で右端に見えている塀とその中の家畜は何でしょう。

塀の形には特徴があります。

下方はに波打つ線が見えます。


これは「波」を意味しますが、「n」の音を表します。

D21.gif

これは口ですが、この下に

N35.gif

波がつき、家畜の決定詞がつくと「RN」になります。

RNNT(レネント)には「幼子」「赤ん坊」という意味があり、

RNNは「仔牛」という意味があります。

RNにガゼルの頭の決定詞がつくと「若いガゼル」の意味になります。

メイスヘッドおける他の部分に描かれた牛に比べて

角が長く、四肢も長くスリムであることから、

ここに描かれているのは「若いガゼル」であることがわかります。


その上を見ると、二重の三角の上に壺の様なものが載っています。

壺の様なものは「陛下」を表します。

二重の三角は「供物」を表します。

「陛下の寄進」といった意味でしょう。



「トキを乗せた建物」は、「ジェフウト」という「トト神(元の名はジェフウティ)」を戴く町の神殿です。

これらの図は、「陛下がトト神殿にガゼルの幼獣を寄進なされた」

ということになるのでしょう。




ウィキペディアによれば、

ガゼルはウシ科に属し、食用になります。

むしろ食用・毛皮利用の目的で乱獲されている、とされています。

古代エジプトではすでに家畜化されていたようです。

模様が目立たないところから、

トンプソンガゼルではなく、グランドガゼルではないかと推測します。


↓ グランドガゼル(成獣は角が長くなります)


impara01.jpg


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第77回 「ナルメル王のメイスヘッド その1」 [ナルメル王のメイスヘッド]

ピラミッド建設の謎解きは、まだまだ続きますが、

その前に初期王朝時代におつきあい下さい。


ヒエラコンポリスで発見された有名な「ナルメル王のパレット」。

このパレットのすぐ近くで発見された儀式用先頭棍棒(メイス)の頭部に

描かれた図を読み取ろうと思います。


narmrmhd.jpg

http://xoomer.virgilio.it/francescoraf/hesyra/narmer.html




この場面には、下エジプトの王の象徴である赤冠を被った王が描かれています。

王座の上にハゲワシが描かれています。

「ネクベト」です。

ネクベトは「ネケブの女神」といった意味です。

ネケブは現在のエル・カブ。

メイスヘッドが発掘されたヒエラコンポリス、

古名「ネケン」の対岸です。



ネケンとネケブは、ともに「永遠の町」の名を持つ双子の町です。

おそらく、このメイスヘッドに描かれた場所は、

ヒエラコンポリスです。


ネクベトは、王であるホルス(古名:ネケニ)の守護者として

王座の上に描かれていますが、

この場面の「場所」を示唆しているように見えます。



王は手にネケクと呼ばれる王笏を持っています。

穀物の脱穀に使われる道具を象徴したもの、

と言われています。


王の前には、何やら輿のようなものが運ばれ、

中には人が座しているように見えます。

これをして、

「下エジプトの王女との結婚場面が描かれている」

という解釈が存在しています。


しかし、私は違った解釈を持っています。

このドーム状の輿のよう図は、

その外側がヒエログリフの分類番号Q14と思われます。

Q14は何らかの宗教的な目的をもったものであることが推察されます。

「ナオス」と呼ばれる祠堂を意味するヒエログリフの決定詞として用いられており、

内部に収められた人物のようなものに目が入っていないことから、

像を示しているのではないかと思われます。

私の推測するところによれば、

「王その人」の座像が収められたナオスが王の前に披見されたのではないかと思われます。




Q14.gif

これが「ナオス」。

祠堂を表しています。



以下は、よく似たヒエログリフ。


O26.gif

こちらは「ステラ(石碑)」です。



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